第7章 実践編 ― ふれあいの順番と触れ方の目安
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この章では「実際に、何を、どんな順番で、どう触れ合うか」を手順として整理します。順番は一つの例です。全部を行う必要はなく、途中で止めても、入れ替えてもかまいません。研究で分かっていることと、経験者のあいだでよく語られる工夫(研究で確かめられたものではありません)は、分けて書いています。各ふれあいにそえた「時間の目安」も経験にもとづく目安で、人によって大きくちがいます。
全体の流れ
- 1. 始める前の確認
- 2. キスと全身へのふれあい
- 3. 手でのふれあい(外側)
- 4. 内側へのふれあい
- 5. 口でのふれあい
- 6. からだを重ねてこすり合わせるふれあい
- 7. 道具を使うふれあい
- 8. 終わったあと
指や道具を中に入れること(挿入)がなくても、ふたりの時間として十分です。する側・される側も固定しなくてよく、途中で交代しても、同時に触れ合ってもかまいません(第1章)。
途中で確かめる言葉の例:「この強さでいい?」「もう少し弱く/ゆっくりがいい?」「ここと、こっち、どっちが好き?」「続けていい?」「少し休む?」。短く、選べる形で聞くと答えやすくなります。
始める前の確認と、キス・全身へのふれあい
- 爪・手洗い・ローション・タオル・手袋やデンタルダムを手の届く所に置く(第3章・第4章)
- 今日したいこと・したくないこと、体調や生理の有無を一言ずつ伝える
- 止める合図を確かめる(第1章)
始めは性器から離れた場所から触れます。キス、髪や首すじ、肩、背中、腕、おなか、太ももの外側から内側へと、少しずつ中心に近づけます。手のひら全体でゆっくりなでる、指先で軽くなぞる、など強さを変え、相手の反応や言葉で好みを確かめます。胸も、まずまわりから弱い力で。経験者のあいだでは、キスは唇を軽く合わせるところから始めて急に深くしないこと、途中で水分補給や休憩をはさむことがよく語られています。
時間の目安:10分ほど。急がないほど、からだのうるおいが追いつきやすくなります(第3章)。
合わない時:くすぐったいなら、指先から手のひら全体に変えて、少し強めにゆっくり。
確かめる言葉:「どこを触られるのが好き?」「くすぐったくない?」
手でのふれあい(外側)
アメリカの18〜94歳の女性1,055人の調査では、性器への触れ方の好みが、場所・強さ・動きの形・リズムの4つで大きく分かれていました(Herbenick ら, 2018)。原文で確かめた主な数字です。
- 動きの形:上下を好む人が63.7%、円を描く動きが51.6%、左右が30.6%。好む形は1種類だけ、という人が41%
- 強さ:多くは軽い〜中くらいを好み、強い圧を好む人は10.7%。どの強さも同じように心地よい人は15.9%
- クリトリスへの間接的な触れ方が好きな人のうち、69.1%が「皮(包皮)の上から」を選んだ
- 75%を超える人が選んだのは、一定のリズム、クリトリスのまわりを円を描く動き、動きの切り替え、強弱を行き来すること
国全体の姿を映すように選んだ調査ですが、ほとんどが異性を好きになる女性で、女性同士の場面に限った結果ではありません。「試す候補の一覧」として使いましょう。
- ローションを指先に少しとり、外側のひだ(小陰唇)を、人差し指と中指の腹で上下にゆっくりなでる
- クリトリスには、いきなり直接触れず、皮の上から、または左右のまわりから。指の腹で小さな円や短い上下の動きを試す
- 強さは「皮膚の上をすべる程度」から始め、相手の言葉で「皮膚が少し動く程度」まで上げるかを決める
- 速さはゆっくりから。好みのリズムが見つかったら、急に変えずに続ける
- 手のひらのつけ根を外側全体に当て、押したまま小さく揺らす方法もある。直接の刺激が強すぎる人に向く
いちばん確実なのは、本人に教えてもらうことです。触れている手の上に相手の手を重ね、場所・強さ・速さを導いてもらいましょう。経験者のあいだでは、お互いが自分で触れる様子を見せ合い、好みを目で伝える方法もよく勧められています。
時間の目安:一つの動きを1〜2分続けてから、変えるかを決める。全体では10〜20分以上かかることも珍しくありません。
合わない時:強さ・速さ・場所・形のうち、一つだけ変える。強すぎたら、皮の上からや手のひらに戻る。手が疲れたら、反対の手に替えるか、ひじをクッションにのせる。
確かめる言葉:「上下と円、どっちがいい?」「このまま続けていい?」
内側へのふれあい
中に触れるのは、外側で十分に時間をとり、相手が望んだときだけにします。
- 爪を短くなめらかに整え、手を洗う。香りの強いハンドクリームは刺激になるので塗らない。気になるときは手袋をつける(第3章)
- 指とまわりにローションをたっぷりつける
- 指1本、第一関節くらいまでから。入り口のすぐ内側だけに触れる方法もある
- 「大丈夫」と言われたら少しずつ奥へ。指を中で止め、おなか側の壁を、手前に招くように指の腹で押す動きを試す
- 指を増やすかどうかは、毎回たずねてから
アメリカの18〜93歳の女性3,017人の調査では、入り口のすぐ内側への触れ方(Shallowing)を使ったことがある人が83.8%、指先で行ったことがある人は60.4%でした。中に触れている間にクリトリスにも触れる組み合わせ(Pairing)を使ったことがある人は69.7%で、パートナーが指で行ったことがある人は43.1%でした(Hensel ら, 2021)。回答者の91.2%は異性を好きになる女性で、場面の多くは男性との挿入ですが、女性同士でも、外側と内側に別々の手で同時に触れる形として試せます。
時間の目安:入り口で1〜2分止めてから進む。動かすのは、ゆっくり短い幅で。
合わない時:奥より入り口近くに戻る。出し入れより、止めたまま押す動きに変える。外側への触れ方を足す。
確かめる言葉:「入れていい?」「痛くない?」「もう少し浅いほうがいい?」
痛み・出血・強い違和感があったら、すぐに指を抜いて止めます。中に触れられるのが好きでない人もいます。それも自然な好みです(第2章)。
口でのふれあい
- 歯みがきなどで口の中を清潔に。口内炎や唇のただれがあるときは避ける
- 口と性器の間にデンタルダムを当てると、うつる病気(性感染症)を減らせる。毎回新しいものを使い、始めから終わりまで当てたままにする(CDC、詳しくは第4章)
- 舌は力を抜いて広く平らにし、外側のひだ全体をゆっくりなでるところから
- クリトリスには、舌先より舌の広い面で、皮の上から触れるほうが強すぎにくい。上下・左右・小さな円を試し、好みの動きが分かったら一定のリズムで続ける
経験者のあいだでは、上に重なる側が肘や膝で体重を支えること、横向きで行うと疲れにくいことがよく語られています。第4章のとおり、口で触れられる回数と細菌性腟症のかかりやすさの関係を示した研究もあるので、いつもとちがうおりものやにおいがある日はお休みにしましょう。
時間の目安:あごや舌が疲れやすいので、数分ごとに手に替えて休むとよいと言われます。
合わない時:舌先から舌の広い面へ、速さより一定のリズムへ。
確かめる言葉:「このまま続けていい?」「手と、どっちがいい?」
からだを重ねてこすり合わせるふれあい
性器同士や、性器と太ももなどを重ねてこすり合わせるふれあい(トリバディズム)は、女性同士で広く行われています(第3章)。姿勢は名前より「どこが重なるか」「誰が動きを調整しやすいか」で選びます。
- 向かい合って上下に重なる:下の人の太ももに、上の人が外側を当てる形。上の人が角度や押す強さを調整しやすい
- 横向きで向かい合う:体重がかからず疲れにくい。膝や腰に不安がある人にも向く
- 脚を交差させて性器同士を近づける:両方の外側が触れやすい一方、股関節に負担がかかりやすく、うまく合わないことも多い
経験者のあいだでよく語られる工夫です(研究で確かめられたものではありません)。
- 性器同士よりも、太ももに当てる形のほうが合わせやすい
- 骨同士を強く打ちつけると恥骨のあたりが痛むので、押し当てたまま小さく揺らす・回す動きにする
- 軽くストレッチをし、腰の下にクッションを入れて角度を調整する。合わなくても笑って姿勢を変えればよい
- ひりひりしないよう、ローションを使い、途中で足す
時間の目安:脚や腰が疲れたら、すぐ姿勢を変える。
合わない時:性器同士から太ももへ、交差から横向きへ。
確かめる言葉:「当たってる?」「脚、つらくない?」
姿勢ごとのふれあい方と、ふたり同時の組み合わせ
どの姿勢が合うかは、からだの大きさや体力で変わります。以下は経験者のあいだでよく語られる特徴で、研究で比べたものではありません。
- 並んで横になる:手が届きやすく、いちばん疲れにくい。ふたり同時に手で触れ合いやすい
- 後ろから抱える:後ろの人が、前の人の胸や外側に手を回す形。自分で触れるときと同じ向きで触れられるので、強さや場所を合わせやすい。前の人は手を重ねて導きやすい。同時に触れ合うのは難しい
- 向かい合って座る:顔が見えて、キスをしながら手で触れ合える。長く続けると腰が疲れやすいので、壁やクッションに寄りかかる
- 一方があお向け:あお向けの人は力を抜きやすく、触れる側は両手や口を使いやすい。腰の下に枕を入れると角度を変えられる。同時に触れ合うのは難しい
ふたり同時に心地よくなれる組み合わせの例です。
- 並んで横になり、お互いの外側に同時に手で触れる。まずどちらか一方に集中し、慣れてから同時にすると、自分の手がおろそかになりにくい
- 向かい合わせで、2人のからだの間に小さな振動する道具をはさむ。いちばん弱い設定で始め、コンドームをかぶせるなど第4章の予防を守る
- 横向きで頭と足を逆にして、口でのふれあいを同時に行う。首と腰の下に枕を入れると楽になる
- それぞれが自分で触れながら、キスや抱擁をする。好みを見せ合う練習にもなる
道具を使うふれあい
- 振動するものは、いちばん弱い設定で、外側に当てるところから始める
- 共有するときはコンドームをかぶせ、人が替わるごとに付け替える。使ったらすぐ洗って乾かす(第3章)
腰につけて使うペニスバンド型の道具の基本です。
- 体に安全な素材で、細め・短めのものを選ぶ。ローションを道具と入り口の両方にたっぷりつける
- 受け入れる側がペースを決める。受け入れる側が上になると、深さや角度を自分で調整しやすい
- 入り口あたりで止め、「進めていい?」と聞いてから少しずつ進める
- 大きく出し入れするより、奥に入れたまま小さく揺らし、つけ根を外側に当て続ける方法もある
先ほどの調査では、道具を中に入れたまま、つけ根をクリトリスに当て続ける方法(Rocking)を道具で行ったことがある人が35.8%、腰の下に枕を入れるなど腰の角度を変える方法(Angling)を使ったことがある人が87.5%でした(Hensel ら, 2021)。ペニスバンド型そのものを調べた研究ではありません。経験者のあいだでは、つける側が先に1人でつけて動きに慣れておくこと、指1本→指2本→小さい道具と段階を踏むこと、ベルトをしっかり締めてずれないようにすることが、よく勧められています。
時間の目安:強い振動を同じ場所に長く当て続けない。しびれたら休む。
合わない時:振動を弱める、布越しにする、当てる場所を少しずらす。
確かめる言葉:「強さ、一つ下げる?」「もう少しゆっくりにする?」
1回分の流れの例(30分ほど)
時間はあくまで一例です。途中で止めても、どこかを長くしてもかまいません。
- 0〜5分:準備と、今日したいこと・止める合図の確認
- 5〜15分:キスと全身へのふれあい。並んで横になる姿勢で
- 15〜25分:手でのふれあい(外側)。好みの動きが見つかったら続ける。望めば内側や口でのふれあいへ。途中で交代するか、並んで同時に
- 25〜30分:ゆっくり弱めて終える。拭く・洗う、ふれあいの時間
終わったあとと、よくある失敗
- おしっこをしておく。ぼうこうの感染を防ぐためによく勧められるが、女性同士の場面での効果を確かめた研究は見つからなかった
- ぬるま湯で外側をやさしく洗うか、清潔なタオルで拭く。腟の中は洗わない
- 道具を洗って乾かし、清潔な袋にしまう。コンドーム・手袋・デンタルダムは捨てる
- 抱き合う、手をつなぐなど、ふれあいの時間を少しとる
- 「よかったこと」を一つずつ伝え合う。直してほしいことは、落ち着いた別の時間に話す
- 最初から強すぎる・速すぎる:いちばん弱い所に戻り、相手の言葉で上げる
- 好みの動きを見つけたのにすぐ変える:心地よいと言われた動きは、そのまま続ける
- 乾いてひりひりする:手を止めてローションを足す。痛みが残るなら今日は終える
- 黙って続ける:途中で一言たずねる。答えがないときは手を止める
- 「届かせなきゃ」とあせる:オーガズムはゴールではありません(第2章)
感じ方には大きな個人差があり、この章の方法で必ず心地よくなるわけではありません。首を圧迫する、洗っていない道具を共有する、強い振動を長時間当て続けるといった方法は避けましょう。痛み・出血・強い違和感があったらすぐに止め、続くときは女性の体をみる診療科(婦人科)に相談してください(第5章)。
ふたりで試すお題 服を着たまま、手の甲の上で「上下・円・左右」の3つの動きと「弱い・ふつう」の2つの強さを試し合い、好きな組み合わせを伝え合いましょう。次の時間に、手を重ねて導く練習をしてみてください。
参考にした資料
- Herbenick D, Fu TJ, Arter J, Sanders SA, Dodge B (2018). Women's Experiences With Genital Touching, Sexual Pleasure, and Orgasm. Journal of Sex & Marital Therapy
- Hensel DJ, von Hippel CD, Lapage CC, Perkins RH (2021). Women's techniques for making vaginal penetration more pleasurable. PLOS ONE
- How to Use a Dental Dam(米国疾病予防管理センター CDC)
- Women Who Have Sex with Women (WSW) and Women Who Have Sex with Women and Men (WSWM)(CDC 性感染症診療指針)