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第1章 同意と話し合い ― ふたりの時間のいちばんの土台

⏱ 読む時間の目安:約4分

ふたりで過ごす性の時間は、どちらか一方のためのものではありません。ふたりとも「したい」と思えていることが出発点です。上手なやり方や特別な知識よりも先に、まず大切にしたいのが「同意」と「話し合い」です。この章では、同意とはどういうものか、気持ちをどう伝え合うかをまとめます。

同意とは「その時、その行為に、自分の意思で」うなずくこと

性的な同意とは、相手と性的なふれあいをすることに、自分の自由な気持ちで「いいよ」と言える状態のことです。研究者の間でも、決まった一つの定義はまだありません。北米の研究を集めてまとめた論文(総説)では、同意を考えるときに役に立つ考え方として、次のようなものが紹介されています(Muehlenhard ら, 2016)。ただし、この論文は主に北米の大学に通う若い大人を調べた研究をまとめたものです。年齢や文化が違う人に、そのまま当てはまるとは限りません。

酔っている時や、断りにくい時は同意があるとは考えない

日本では2023年に刑法が変わりました。同意のない性的な行為を罰する罪(不同意性交等罪)などが新しくできています。法務省の説明では、「したくない」という気持ちを持つこと、それを表に出すこと、そのとおりに行動することが難しくなる原因が挙げられています。たとえば、お酒や薬物の影響、意識がはっきりしない状態、驚いたり怖がったりして体が固まってしまう状態、立場やお金の力関係による影響などです。

つまり、次のような場面では、たとえ口では「うん」と言っていても、自由な同意とはいえないことがあります。お酒でふらふらしている時、寝ぼけている時、上司と部下のように断りにくい関係にある時などです。「今日はやめておこう」と決めることが、相手を大切にすることにつながります。

相手が酔ってはっきり話せない、意識がぼんやりしている、怖がって黙っている、という時は、性的なふれあいを始めない・続けないのが基本です。「たぶん大丈夫」で進めるのはやめましょう。「はっきり大丈夫」と分かる時だけにしましょう。

「言葉」と「しぐさ」のずれに気をつける

アメリカ中西部の大学に通う男女185人に、同意をどう伝え、どう受け取っているかを自由に書いてもらった研究があります。この研究では、同意とは何かという考えそのものには、男女の違いはありませんでした。一方で、女性は言葉で伝える方法を多く挙げていました。男性は、しぐさや雰囲気で伝えたり読み取ったりする方法を多く挙げていました(Jozkowski ら, 2014)。調べたのは限られた地域の185人だけなので、すべての人に当てはまるとは言い切れません。それでも、「雰囲気で分かるはず」という思い込みが、すれ違いのもとになりうることが分かります。迷ったら、言葉で確かめるのがいちばん確実です。

したいこと・したくないことの伝え方

性について話すのは、少し照れくさいものです。けれど、48件の研究をまとめた分析(メタ分析)では、パートナーと性について話し合えているカップルほど、性の働き(性機能)がよい傾向がありました。性欲、興奮、うるおい、気持ちよさの頂点(オーガズム)、勃起などがよく、痛みも少なかったのです(Mallory ら, 2019)。これは「つながりがある」という結果です。話すことが原因でよくなった、と証明したものではありません。それでも、話し合いがふたりの時間を支える土台になりうると考えられます。

ふたりだけの「合図」を決めておく

最中は言葉が出にくいこともあります。そんな時のために、前もって合図を決めておくと安心です。

同意は、一度もらえば終わりというものではありません。ふたりの時間のあいだずっと続く「確かめ合い」です。確かめることは、雰囲気を壊すものとは違います。安心して楽しむための準備だと考えてみてください。

ふたりで試すお題 落ち着いた時間に、「されてうれしいこと」と「今はしたくないこと」を1つずつ紙に書いて、見せ合ってみましょう。あわせて、言葉が出にくい時の「ストップの合図」をひとつ決めてくださいね。

参考にした資料

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