鵯越え(ひよどりごえ)― よつんばいで後ろからの形
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鵯越えは、受け入れる側がよつんばいになり、後ろの人がひざ立ちで重なる形です。今でいう「後背位(バック)」の基本の形にあたります。背骨の動きを測った研究では、腰を曲げると痛む男性にとって負担の少ない形とされました。その一方で、陰茎の重いけがが多い形でもあります。良い点と注意点の両方を、研究をもとにまとめます。
名前の由来
「鵯越(ひよどりごえ)」は、源平の合戦(一ノ谷の戦い)で源義経が奇襲をかけた場面として知られる、神戸の地名です。後ろから攻める形をこの話になぞらえた、という説明がよく見られますが、確かな資料は見つからず、諸説あります。なお、四十八手には「鵯越えの逆落とし」という別の手もあり、こちらは口でのふれあいの形です(一覧)。
どんな形か
- 受け入れる側:両手と両ひざをついたよつんばい。ひじをついて上半身を低くする形もある
- 後ろの人:受け入れる側の後ろで、ひざ立ちになる
- 動くのは主に後ろの人。受け入れる側も、前後に体をゆらして深さを調整できる
- 顔が見えない。言葉と合図をいつもより大事にする
やり方(手順)
- 受け入れる側がよつんばいになる。手首がつらい人は、ひじをつくか、胸の下に枕を入れる
- ひざの下に枕やたたんだタオルを入れる。ふたりとも、ひざが硬い面に当たり続けないようにする
- 後ろの人が、受け入れる側の腰の高さに自分の腰を合わせる。合わない時は、低い側のひざの下にクッションを足す
- うるおいを確かめ、手で陰茎を支えて入り口に合わせる。受け入れる側が、自分で後ろに下がって迎え入れてもよい
- 最初は浅く、ゆっくり。この形は奥まで届きやすいので、深さは受け入れる側が「もう少し浅く」などと伝えて決める
- 後ろの人は、背中を丸めて腰だけで動くより、股関節から体を前後させるつもりで動く(下の「腰痛」を参照)
からだの負担と、身長差・やわらかさ
- 受け入れる側:手首とひざに体重がかかる。ひじをつく・胸の下に枕を入れると、手首の負担が減る
- 後ろの人:ひざで体を支え続けるので、ひざが痛みやすい
- 身長差:腰の高さが合わないと、どちらかが無理な姿勢になる。クッションで高さを合わせるのがいちばん簡単
- やわらかさ:大きく開脚する必要はないので、体のかたい人でも取りやすい
腰痛との相性(研究から) カナダの研究グループは、健康なカップル10組の背骨の動きを、動きを記録する装置で測りました。男性の背骨は、5つの形のどれでも主に「前に曲がる」向きに動いていました。腰を前に曲げると痛む男性には、受け入れる側がよつんばいになる形(この鵯越えに近い形)が最も負担が少なく、よく「腰にやさしい」と言われる横向きで後ろから寄りそう形は、逆に最も勧められない結果でした(Sidorkewicz, McGill, 2014)。研究者は、背中ではなく股関節を曲げ伸ばしして動く方法も勧めています。
同じグループが女性の背骨を測った研究では、よつんばいの形での女性の背骨は、主に「後ろに反る」向きに動いていました。腰を前に曲げると痛む女性には、手をついたよつんばいが勧められる一方で、腰を反らすと痛む女性には向かないとされています(Sidorkewicz, McGill, 2015)。腰を反らすと痛む人は、別の形(あおむけで向かい合う形など)を選ぶのが無難です。この形をとる時は、研究で確かめた方法ではありませんが、背中を反らしすぎない、浅く小さく動く、痛みが出たらすぐやめる、を目安にしてください。どちらの研究も、腰痛のない10組で測ったもので、腰痛のある人で効果を確かめたものではありません。腰痛の種類は人によって違うので、続く痛みがある人は医師や理学療法士に相談してください。
けがを防ぐ ― 陰茎折症に気をつける
勃起した陰茎が強く曲げられて、中の膜が裂けるけがを陰茎折症といいます。ブラジルの病院で90例を調べた研究では、後ろからの形が37例(41%)でいちばん多く、男性が上の形とともに、両側の海綿体が裂ける・尿道まで傷つくといった重いけがが多い傾向でした(Barros ら, 2017)。12本の研究、490例をまとめた2024年の分析でも、後ろからの形は、危険が高い形としてはっきり出ていました(Syarif ら, 2024)。別の42例の研究でも、男女の性行為で起きた28例のうち8例(28.6%)が後ろからの形でした(Reis ら, 2014)。ただし、どれもけがをした人だけを集めた研究で、この形をとった人の何人に1人がけがをするかは分かりません。
後ろからの形では、勢いよく動くうちに陰茎が抜け、戻る時に入り口をそれて、おしりや会陰(腟と肛門のあいだ)に強く当たることがあります。研究で確かめた予防法ではありませんが、次の点を守ると、そうした場面を減らせると考えられます。
- 抜けるほど大きく引かない。ストロークは小さめにする
- 抜けたら、勢いのまま戻さない。止まって、手で支えて入れ直す
- 受け入れる側の腰を強く引き寄せない
- 速さは少しずつ上げる。「痛い」「待って」の一言ですぐ止まれる速さにとどめる
- うるおいが減ってきたら、ローションを足す
「ポキッ」という音、急に萎える、強い痛みや腫れがあった時は、すぐに行為をやめ、泌尿器科か救急へ。尿に血が混じる、おしっこが出にくい時は尿道のけがの可能性があります。受け入れる側も、奥に強い痛みが出た時、出血がある時は止めて、続く時は婦人科に相談してください(第5章)。
同意と、止める合図
- 顔が見えないので、始める前に「止めて」の言葉と、手で相手の太ももを2回たたくなどの合図を決めておく
- 後ろの人は、ときどき「深さ大丈夫?」「痛くない?」と声をかける。返事がない、体がこわばっている時は止まって確かめる
- 髪を引っぱる、おしりをたたく、といった行為は、事前に話し合って両方が望んだ時だけ。その場の勢いで足さない
- 腟から肛門へ、肛門から腟へと、洗わずに移らない(感染の予防)
同意の基本は第1章にまとめています。
似た手との違い
- うしろ櫓:受け入れる側が立ったまま台に手をつく形。床に体をつけないので場所を選ばないが、身長差の影響が大きい(くわしく)
- 窓の月:ふたりとも横向きに寝て、後ろから寄りそう形。動きは小さく深くなりにくいが、上の研究では腰を前に曲げると痛む男性には向かない結果だった
- 抱き上げ・押し車:よつんばいの受け入れる側の脚を、後ろの人が持ち上げる形。手首・肩・腰への負担がとても大きいので、試すなら短い時間だけ
- 燕返し:うつぶせの相手の片脚を持ち上げ、脚を交差させる形。後背位と側位の中間
ほかの手は四十八手の一覧から探せます。
こんな時に向く・向かない
- 向く:後ろの人が、腰を前に曲げると痛むタイプの腰痛を持っている時(股関節から動く前提で)
- 向く:受け入れる側が、自分の手や道具でクリトリスにふれながら続けたい時
- 向かない:受け入れる側が、腰を反らすと痛むタイプの腰痛を持っている時
- 向かない:手首やひざが痛む時、奥に痛みが出やすい時
- 向かない:お酒が入って動きが大きくなりがちな時
参考にした資料
- Sidorkewicz N, McGill SM(2014)Male Spine Motion During Coitus: Implications for the Low Back Pain Patient. Spine 39(20):1633-1639
- Sidorkewicz N, McGill SM(2015)Documenting female spine motion during coitus with a commentary on the implications for the low back pain patient. European Spine Journal
- University of Waterloo(2014)Back pain killing your sex life? Groundbreaking study reveals best positions to save your spine
- Barros R ら(2017)Relationship between sexual position and severity of penile fracture. International Journal of Impotence Research 29(5):207-209
- Syarif S ら(2024)What is the most dangerous sexual position that caused the penile fracture? A systematic review and meta-analysis. International Brazilian Journal of Urology 50(1)
- Reis LO ら(2014)Mechanisms Predisposing Penile Fracture and Long-Term Outcomes on Erectile and Voiding Functions. Advances in Urology