第5章 よくある悩みと相談先
⏱ 読む時間の目安:約5分
ふたりの時間を重ねるほど、うまくいかない日や、誰にも聞けない悩みも出てきます。それは、あなたたちだけではありません。この章では、よくある悩みとの向き合い方と、ひとりで抱えないための相談先をまとめました。
痛みがある
痛みは「少し待って」という、からだからのサインです。まずは手を止めましょう。そして、すべりをよくする液(ローション)を足す、触れる強さを弱める、外側に戻る、を試してみましょう(第3章)。それでも痛みが続く、毎回同じところが痛む、終わったあとに出血や痛みが残る、という場合もあります。そのときは、うつる病気(感染症)や皮膚のトラブル、腟の乾燥などが関わっていることもあります。がまんを重ねず、女性の体をみる診療科(婦人科)で相談しましょう。
届かない・届きにくい
第2章で見たように、気持ちよさの頂点(オーガズム)に達する回数は、人によって大きくちがいます。疲れや心の負担(ストレス)、緊張、体調、飲んでいる薬などで、届きにくい日があるのは自然なことです。
- 目標を「届くこと」から「心地よかったことを一つ見つける」に変えてみる
- 自分ひとりのときに、どんな触れ方が心地よいか確かめ、それを相手に伝える
- 触れる場所や強さ、道具を使うかどうかなど、条件を一つだけ変えてみる
長く悩んでいてつらいときは、婦人科や、性の悩みをみてくれる医療機関に相談する方法もあります。
気持ちや頻度のすれ違い
「したい気持ち」の強さや回数が、ふたりでちがうのはよくあることです。どちらが正しいということはありません。
- 責める言い方をせず、「わたしは〜と感じている」と自分を主語にして話す
- 性的な行為だけでなく、手をつなぐ、抱き合って眠るなどのふれあい(スキンシップ)も大切にする
- 話し合いは、ベッドの外の落ち着いた時間に
- 「今日はしない」と言われても、相手そのものを拒まれたわけではないと受け止める
受診のハードル
婦人科で「パートナーは男性ですよね」という前提で質問されて、本当のことを言いにくかった、という声は少なくありません。女性を好きになる女性(レズビアン女性)225人の調査があります。子宮の入り口のがんを調べる検査(子宮頸がん検診)を定期的に受けていない人には、次のような傾向がありました。差別されるのが不安で受診を遅らせることが多く、いつもみてもらう医師(かかりつけ医)に、どの性別の人を好きになるか(性的指向)を伝えていない人も多くいました(Tracy ら, 2010)。医療者への不安が、検診から遠ざかる理由の一つになりうると分かります。ただ、インターネットで集めた回答で、アメリカのデータです。
アメリカで、レズビアン、複数の性別の人を好きになる人(バイセクシュアル)、決まった枠にあてはまらない人(クィア)、相手の性別にかかわらず人を好きになる人(パンセクシュアル)の女性を調べた研究があります。バイセクシュアルやパンセクシュアルの人は、レズビアンの人より、医療者に自分の性のあり方(セクシュアリティ)を伝えにくい傾向がありました(Baldwin ら, 2017)。インターネットの調査で、自分から答えた人に限られています。それでも、同じ「女性同士」でも、立場によって伝えやすさがちがうことを示しています。
すべてを話す必要はありません。伝えるなら「パートナーは女性です」「女性との性的な接触があります」と一言だけでも、必要な検査を考えてもらいやすくなります。受診のときに書く用紙(問診票)に、メモとして書いて渡す方法もあります。
LGBTQに理解のある医療機関を探す
- Ally表明医師マップ:性の多様性(LGBTQ+)と医療についてのインターネット講座(eラーニング)を終え、味方(Ally)であると表明した医師を、地域ごとに探せるサイトです。薬の会社のノバルティス ファーマが運営し、医師向けのeラーニングは一般社団法人にじいろドクターズなどが内容を確かめて(監修して)います。専門医の一覧とはちがい、対応できる内容は医師ごとにちがうため、受診前に施設へ確かめましょう。
- 病院のホームページ:「LGBTQ」「SOGI」「アライ」などの取り組みや、同性パートナーの扱いを公表している病院もあります。
- 地域の相談窓口に聞く:市区町村など(自治体)の、性の多様性についての相談窓口が、地域の情報を持っていることがあります。
カミングアウトや孤立の悩み
家族や職場、友人に話せない。ふたりの関係を相談できる人がいない。そんなひとりぼっちの気持ち(孤立感)は、心とからだの健康にも影響します。自分の性のあり方を打ち明ける(カミングアウトする)かどうか、いつ誰に伝えるかは、あなたが決めてよいことです。無理に話す必要はありませんし、話さないことを責められる理由もありません。
相談できる窓口(確認日:2026年9月29日)
- よりそいホットライン(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター):📞 0120-279-338(24時間・無料)。音声の案内で「4」を押すと、セクシュアルマイノリティ専門ラインにつながります。福島県からかける場合は📞 0120-279-226です。
- みんなの人権110番(法務省):📞 0570-003-110(平日8時30分〜17時15分)。差別やいやがらせ(ハラスメント)など、人としての権利(人権)にかかわる問題を相談できます。
- 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター:📞 #8891。同意のない行為を受けたとき、相手が同性でも相談できます。
- 保健所:性行為でうつる病気(性感染症)の検査や相談(第4章)。
パートナーから、たたかれる、お金や連絡を管理される、望まない行為を強いられる、ということがあれば、女性同士の関係でも暴力です。ひとりで抱えず、上の窓口に相談してください。
ふたりで試すお題 「いざという時の連絡先メモ」を一緒に作り、スマホに保存しておきましょう。かかりやすい婦人科、近くの保健所、相談窓口の番号をまとめます。調べているうちに、お互いの不安を話すきっかけにもなります。
参考にした資料
- Tracy J.K., Lydecker A.D., Ireland L (2010). Barriers to cervical cancer screening among lesbians. Journal of Women's Health
- Baldwin A ほか (2017). Health and identity-related interactions between lesbian, bisexual, queer and pansexual women and their healthcare providers. Culture, Health & Sexuality
- よりそいホットライン 性的指向や性自認に関してお悩みの方へ(社会的包摂サポートセンター)
- Ally表明医師マップ(LGBTQ+と医療/ノバルティス ファーマ)
- みんなの人権110番(法務省)
- 性犯罪・性暴力とは(内閣府男女共同参画局)