第3章 心地よく過ごす工夫
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心地よい時間は、ちょっとした準備と気づかいで大きく変わります。この章では、次のことを一般的なポイントとしてまとめました。手と爪の整え方、すべりをよくする液(ローション)、振動する道具(バイブ)などの使い方と清潔の保ち方、痛みを防ぐコツです。どれも「こうしなければ」というきまりではありません。ふたりに合うものを選ぶための材料です。
時間をかける
からだのうるおいや広がりは、気持ちが高まってから少しずつ追いついてきます。急がずに、キスや、肩・背中・太もものあたりへのふれあい(スキンシップ)など、性器以外に触れる時間をたっぷりとりましょう。そうすると、からだの準備が整いやすくなります。第2章で紹介した研究でも、女性全体でみると、最後の性行為の時間が長めの人ほど、気持ちよさの頂点(オーガズム)に達する回数が多い傾向がありました。時間を決めず、「今日はここまで」で終えてよいと決めておくと、あせりも減ります。
手と爪を整える
女性同士の性行為では、手や指で触れることがとても多くなります。いろいろな国の女性3,116人を対象にした調査があります。指で腟に触れた経験は99.2%、性器同士をこすり合わせた経験は99.8%で、ほとんどの人が経験していました(Schick ら, 2012)。手を使う触れ合いは、ごく一般的だと分かります。ただし、インターネットで自分から答えた人の調査です。また、分析はアメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリアの回答者に限られているので、注意が必要です。
- 爪は短く切り、角をやすりでなめらかにする
- ささくれや手荒れがあるときは、無理に内側に触れない
- 始める前に、石けんで指の間や爪の間まで洗う
- 指輪や腕時計は外しておく
- 自分の性器に触れた手で、そのまま相手に触れるときは、いったん洗うか手袋をつけ替える
爪を伸ばしていたい人や、ネイルをしている人は、使い捨ての手袋を使う方法もあります。手袋の素材は、天然ゴム(ラテックス)や合成ゴム(ニトリル)です。手袋は、うつる病気(感染症)を防ぐのにも役立ちます(第4章)。
ローションを味方にする
アメリカの全国調査では、女性を好きになる女性(レズビアン女性)の60.1%、複数の性別の人を好きになる女性(バイセクシュアル女性)の77.1%が、ローションを使ったことがありました。使う理由には、気持ちよさを高めるため、楽しくするため、からだの負担を減らすため、が挙げられていました(Hensel ら, 2015)。この調査は、国全体を代表するように選んだ回答者を使っているのが強みです。ただ、使った経験と理由をたずねたもので、使い心地や安全さを比べた研究ではありません。
女性2,453人が5週間、水が主成分のもの(水性)か、シリコーンが主成分のもの(シリコーン系)のローションを使い、毎日記録した研究があります。どちらも、気持ちよさや満足度の高さと関係がありました。性器の不快な症状は、水性のほうが少なめでした(Herbenick ら, 2011)。使う人も調べる人も、どの製品か分からないようにして比べた(二重盲検)のが強みです。ただ、記録の中心は男性との性行為や1人での行為で、女性同士の場面は分けて調べられていません。
- 水性:洗い流しやすく、どの素材の道具にも使いやすい。乾きやすいので、こまめに足す
- シリコーン系:乾きにくい。シリコーン製の道具を傷めることがあるので、道具の説明書を確かめる
- 油が主成分のもの(油性。ベビーオイル、ワセリンなど):ラテックスの手袋やコンドーム、口や性器をおおう薄いシート(デンタルダム)を破れやすくするため、一緒には使わない(CDC)
濡れにくいことは「気持ちが入っていない」というサインとは限りません。体調や生理の周期(月経周期)、年齢、飲んでいる薬などでも変わります。はじめからローションを手元に置いておくと、途中で気まずくなりません。
道具(バイブなど)の使い方と衛生
アメリカとイギリスで、女性と性行為をする女性2,192人を調べた調査があります。4分の3以上の人が、1人のとき、または女性パートナーとバイブを使ったことがあると答えました。最近パートナーと使った人は、使っていない人より、性の働き(性機能)の点数が高めでした(Schick ら, 2011)。ただし、これは同時に見られた関係です。道具のおかげで点数が上がったとまでは言えません。
使うときの一般的なポイントです。
- はじめは弱い振動で、外側に当てるところから試す
- 内側に入れる道具は、ローションを使い、ゆっくり進める
- 使う前と後に、説明書のとおりに洗う(水に強いかどうかも確かめる)
- ふたりで同じ道具を使うときは、コンドームをかぶせ、人が替わるごとに新しいものに付け替える
- しまうときは清潔な袋や箱に入れる。ひびや傷が出てきたら買い替えを考える
女性12人がバイブを使ったあとを調べた、小さな研究があります。腟に、子宮頸がんなどの原因になるウイルス(HPV)があった人の道具からは、洗った直後もHPVが見つかることがありました。24時間後、シリコーン製の道具では見つかりませんでした。一方、別の素材(TPE)の道具では、まだ見つかる例がありました(Anderson ら, 2014)。人数がとても少なく、見つかったウイルスが本当にうつる力を持っていたかまでは調べていません。それでも、共有するときはコンドームを付け替えるほうが安心だと考えられます。
痛みを防ぐ
- 痛いときは、がまんせずにすぐ伝える。伝えられた側はすぐ止める
- 内側に触れる前に、外側でしっかり時間をとる
- 指や道具の太さは、小さいものから少しずつ
- 乾いてきたらローションを足す
- 触れる強さは、相手の反応を見ながら弱めから
痛みが毎回ある、終わった後も痛みや出血が続く、という場合は、からだからのサインかもしれません。無理を重ねず、女性の体をみる診療科(婦人科)に相談しましょう(第5章)。
ふたりで試すお題 次の時間の前に、ふたりで「準備リスト」を作ってみましょう。爪、手洗い、ローション、手袋、道具とコンドーム、タオル。そろえる係を決めて一緒に準備すると、それも楽しい時間の一部になります。
参考にした資料
- Schick V, Rosenberger JG, Herbenick D, Reece M (2012). Sexual behaviour and risk reduction strategies among a multinational sample of women who have sex with women. Sexually Transmitted Infections
- Hensel DJ ほか (2015). Lifetime Lubricant Use among a Nationally Representative Sample of Lesbian- and Bisexual-Identified Women in the United States. Journal of Sexual Medicine
- Herbenick D, Reece M, Hensel D, Sanders S, Jozkowski K, Fortenberry JD (2011). Association of lubricant use with women's sexual pleasure, sexual satisfaction, and genital symptoms. Journal of Sexual Medicine
- Schick V ほか (2011). Prevalence and characteristics of vibrator use among women who have sex with women. Journal of Sexual Medicine
- Anderson TA, Schick V, Herbenick D, Dodge B, Fortenberry JD (2014). A study of human papillomavirus on vaginally inserted sex toys, before and after cleaning, among women who have sex with women and men. Sexually Transmitted Infections
- How to Use a Dental Dam(米国疾病予防管理センター CDC)













