第9章 相互オナニー ― ふたりで、それぞれのひとり時間を重ねる
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「相互オナニー」は、ふたりが同じ時間に、自分で自分にふれる(または相手にふれ合う)ふれあいです。英語では「ミューチュアル・マスターベーション」と呼ばれ、挿入をしないふれあい(アウターコース)の一つです。男女のふたりだけでなく、男性同士・女性同士のふたりにも、そのまま当てはまります。この章では、選ばれる理由、いろいろな形、話し合い、衛生、離れて行う時の注意をまとめます。
ふたりが選ぶ理由
- おたがいの好みを知る:ひとりの時の触れ方(場所・強さ・速さ)は、人によって大きく違う。相手が自分で触れるところを見ると、言葉では伝えにくい好みが分かる。実践編(第7章)でも、本人の手で見せてもらうのが近道、という工夫を紹介しました
- 挿入が難しい時に:体調がすぐれない、疲れている、痛みがある、妊娠中や産後、病気や治療中、年齢による変化(第6章)など、挿入をしたくない・できない時でも、ふれあいの時間を持てる。妊娠中や治療中は、主治医の注意を優先する
- リスクが低い:挿入をしないので、妊娠の心配はほとんどなく、性感染症のリスクも低い(くわしくは下の「妊娠と性感染症について」)
- プレッシャーが少ない:「相手を満たさなければ」という気持ちから離れ、自分のペースで高まれる。届きにくさの悩み(第5章)がある人にも試しやすい
いろいろな形
- 並んで、それぞれ自分にふれる:横に並んで寝る、向かい合って座る、など。キスをしたり、手をつないだり、空いている手で相手の胸や腕にふれたりしながら。いちばん始めやすい
- 見せ合う:少し離れて向かい合い、おたがいの手の動きを見る。恥ずかしい時は、部屋を少し暗くする、最初は見ない(目を閉じる・背中合わせ)から始めてもよい
- 相手の手に重ねる:相手が自分にふれている手に、自分の手を重ねて、動きや強さを感じ取る。次に自分が相手にふれる時の参考になる
- おたがいにふれ合う:相手の性器に手でふれ合う。ふれ方の基本(場所・指の形・強さ)は第7章へ
- 道具を使う:自分の道具を、自分にだけ使う。共有する時は、コンドームをかぶせ、使う人が替わるごとに付け替える(第4章)
話し合いと同意
見せ合うふれあいは、恥ずかしさが大きくなりやすいものです。同意はその都度・一つずつ(第1章)。始める前に、次のことを短く話しておきましょう。
- 見ていいか・見ないでほしいか。途中で「やっぱり見ないで」と言ってもよいこと
- 相手にふれてよいか、自分だけにするか
- 射精する時にどうするか(ティッシュやタオルで受ける、など)
- 「どちらが先に終わっても、相手のペースを待つ」「終わらなくてもよい」こと
終わったあとに、「見て分かったこと」を一つずつ伝え合うと、次のふれあいに生かせます。批評ではなく、「こういう触れ方が好きなんだね」と受け止める言い方にしましょう。
衛生
- 手を洗う:始める前に手を洗い、爪を短く整える。自分の性器にふれた手で相手の性器にふれる時、肛門にふれた手で性器にふれる時は、手を洗うか拭いてからにする
- ローションは分けてもよい:好みのローションがちがえば、それぞれ自分のものを使う。同じ容器を使う時は、性器にふれた手で容器の口に直接ふれない
- タオルを敷く:体液やローションがシーツにつかないように
- 終わったあと:ぬるま湯で洗うか、ぬれタオルで拭き、手を洗う。道具は説明書きのとおりに洗って乾かす
妊娠と性感染症について
- 妊娠:手でのふれあいだけなら、妊娠はほとんど起こらない。ただし、精液や射精前の液(先走り)が手や指につき、その手で腟の入り口にふれたり、精液が外陰部(性器の外側)にかかったりすると、まれに妊娠することがある(Planned Parenthood)。射精前の液に動いている精子が含まれていた男性は、調べた27人中10人でした(Killick ら, 2011)。精液にふれた手は、腟や外陰部にふれる前に洗う
- 性感染症:北米性医学会は、性感染症を、体液でうつるもの(HIV・クラミジア・淋菌など)と、皮膚と皮膚の接触でうつるもの(ヘルペス・HPV・梅毒)に分けて説明し、相互オナニーでも、皮膚の接触でうつる病気のリスクは残ると書いています(SMSNA)。自分にだけふれ、相手の性器や体液にふれなければ、リスクはさらに下がる
- 症状がある日:どちらかの性器や手に、ただれ・水ぶくれ・いぼ・発疹がある日は、相手にふれるのは控える。検査と予防は第4章へ
離れて行う時(ビデオ通話など)の注意
遠距離のふたりが、ビデオ通話でおたがいの姿を見ながら行うこともあります。ただ、性的な画像や映像は、一度流出すると完全に消すことが難しくなります。警察庁は、たとえ交際相手でも、見られたら困る性的な画像を安易に撮らせたり送ったりしないよう呼びかけています(警察庁)。
- 録画・保存をしない:画面の録画やスクリーンショットをしないことを約束する。約束していても、相手の端末の中で何が起きているかは確かめられないことを忘れない
- 顔と体を同時に映さない:映すなら、顔が分からない形にする。部屋の中の手がかり(郵便物、窓の外の景色など)も映さない
- 知り合って間もない相手とはしない:SNSなどで知り合った相手の年齢や性別は、うそかもしれない(警察庁)。交際上のトラブルなどで、画像が悪用される事件も実際に起きている(警察庁)
- 声だけにする:映像を使わず、通話の声だけで行う方法もある
- 困った時は:同意なく性的な画像を公表することは、法律で罰せられる犯罪です(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)。画像をネットに載せると脅された、載せられた時は、すぐに最寄りの警察署に相談する。相手からのメッセージや履歴は消さずに保存しておく(警察庁)
ふたりで試すお題 次の時間に、まず並んで横になり、それぞれが自分にふれる形を5分だけ試してみましょう。終わったあとに、「相手の触れ方で、意外だったこと」を一つずつ伝え合ってみてください。
痛み、ひりひり、ただれが出たら中止してください。見せる・見られることへの抵抗は、恥ずかしいことではありません。どちらかが気が進まない時は、無理に誘わず、別のふれあいを選びましょう。