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第7章 実践編 ― 始めてから終わったあとまでの手順

⏱ 読む時間の目安:約13分

ここまでの章では、同意、からだのしくみ、避妊と予防を見てきました。この章では、実際に「何を、どんな順で、どう触れ合うか」を、手順としてまとめます。書いてあるのはあくまで目安です。心地よさの感じ方は一人ひとり違うので、相手の言葉と反応をいちばんの手がかりにしてください。痛みや不快感があれば、どの段階でもすぐに止めます。

この章では、研究や医療機関の情報にもとづく内容と、「経験者のあいだでよく語られる工夫」をはっきり分けて書きます。後者は研究で確かめられたものではないので、合うかどうかを試しながら取り入れてください。

全体の流れ ― どの段階でも「しない」を選べる

おおまかな流れは次のとおりです。ただし、これは順番に全部こなす「コース」ではありません。どこで終えてもよく、挿入をしない日があってもかまいません。第1章で見たように、同意は行為ごとに確かめるものです。

途中で確かめる言葉は、短いほうが使いやすいです。たとえば「このまま続けていい?」「強さはこのくらい?」「次、ここにふれてもいい?」。伝える側は「もう少し弱く」「そこ」「ちょっと待って」「今日はここまで」のように一言で伝えます。

ふたりの時間の流れどの段階でも「今日はここまで」「しない」を選べます1始める前に確かめる今日したいこと・したくないこと、避妊の準備2キスと全身へのふれあい髪・背中・腕・太ももから。中心へは急がない3手でふれる弱く・ゆっくりから。強さを1〜5で聞く4口でのふれあい(したい時だけ)歯を当てない。コンドーム等で感染を減らせる5挿入(したい時だけ)十分に高まってから。受け入れる側がペースを決める6終わったあとおしっこ・拭く・寄りそう・感想を1つずつ
挿入はゴールではありません。どの段階で終えても、ふたりが心地よければ十分です。

キスと全身へのふれあい

第2章で紹介したアメリカの大きな調査(Frederick ら, 2018)では、女性がオーガズムに届く割合は、ふれあいの内容で大きく違っていました。深いキス・手で性器にふれること・口でのふれあいを組み合わせた女性では80%、そこに挿入を加えた女性では77%でした。挿入だけの場合は、それよりずっと低い割合でした。本人が答えた調査で、組み合わせたから届いたという因果までは分かりません。それでも、挿入の前後のふれあいを省かないことの意味を示しています。

オーガズムに届いた女性の割合(ふれあいの内容別)深いキス+手で性器にふれる+口でのふれあい80%それに挿入を加えた77%
出典:Frederick ら(2018)。アメリカの大きな調査。挿入だけの場合は、これよりずっと低い割合でした。本人が答えた調査で、組み合わせたから届いたという因果までは分かりません。

経験者のあいだでよく語られる工夫は、「外側から中心へ、弱く、ゆっくり」です。

手でふれる ― 場所・指の形・向き・強さ

手でふれる前に、爪を短く整え、手を洗っておきます(第3章)。性器は乾いたままこすると痛みやすいので、うるおいが足りない時はローションを使います。以下の手順のうち、出典を( )で示していないものは、研究で確かめられたものではなく、経験者のあいだでよく語られる工夫です。

女性のからだ クリトリスは、外陰部のいちばん上、左右のひだ(小陰唇)が合わさる所にあります。先端は、フードのような皮(包皮)におおわれています。アメリカの女性約1,000人を調べた全国調査の学会発表では、心地よいとされた場所は、クリトリス、そのまわりの皮膚、ひだ(陰唇)が多く挙がりました。好む強さは「とても軽く」が約3分の1、「中くらい」が約3分の1で、「強め」は約1割でした。動かし方は「上下」を好む人が63%、「円を描く」が52%でした(Herbenick ら, 2016)。同じ調査の報告では、41%の女性が、ある特定の1つのふれ方を好むと答えています。人によって答えがかなり違うので、この数字は「まず試す順番」の参考にとどめてください。

男性のからだ 陰茎は、先の部分(亀頭)と、その裏側にある皮がつながった細いすじ(陰茎小帯)が特に敏感な人が多いとされます。

「もっと弱く」「そこ」を伝えるには 言葉にしにくい時は、ふれている手の上に自分の手を重ね、強さ・場所・速さをそのまま導く方法があります。ふれる側は、導かれた動きをまねして「これで合ってる?」と確かめます。「強さを1〜5で言うと?」と数字で聞くのも、答えやすくなる工夫です。

口でのふれあい

口でのふれあいは、しなくてもよいものです。どちらかが気が進まない時は、ほかのふれあいを選びます。

アメリカの病気予防の専門機関(CDC)は、口でのふれあいでも多くの性感染症がうつること、コンドームや、口と外陰部・肛門の間に置く薄いシート(デンタルダム)を毎回使うことで、うつる危険を減らせることを案内しています。くわしくは第4章を見てください。

挿入は「受け入れる側」がペースを決める

挿入は、ふたりとも十分に高まり、受け入れる側が「いいよ」と言ってからにします。避妊と予防の準備(第4章)も、性器がふれ合う前にすませます。

  1. うるおいが足りなければ、ローション(潤滑剤)を足す(第3章)
  2. 入り口にあてたら、受け入れる側が手で導くか、自分で動いて迎え入れる
  3. 最初は浅く、ゆっくり。入れたまましばらく動かずに、からだが慣れるのを待つのもよい
  4. 深さと速さは、受け入れる側が決める。「もう少し浅く」「ゆっくり」と伝える
  5. 痛みが出たら、その場で止める。角度を変える、ローションを足す、手のふれあいに戻る、今日は終える、のどれを選んでもよい

奥のほうが痛む、何度も痛みが出る、という時は、第5章の相談先(婦人科など)を参考にしてください。

姿勢の選び方と、挿入中に刺激を足す方法

第2章で見たように、挿入だけでオーガズムに届く女性は2割ほどで、多くの人は挿入中にクリトリスへの刺激があると届きやすい、またはより心地よいと答えています(Herbenick ら, 2018)。そこで姿勢は、名前よりも「誰が動きを調整しやすいか」「深さ」「からだの負担」「手が使えるか」で選ぶと考えやすくなります。

どの形でも、痛い・苦しい・疲れたと感じたら、動きを止めて「形を変えようか」と声をかけます。横向きの形や、受け入れる側が上になる形に移ると、深さと負担を調整しやすくなります。

刺激を足す方法は、主に2つあります。1つは、受け入れる側か相手の指で、手でふれる時と同じようにクリトリスにふれることです。もう1つは、小さな振動する道具(バイブレーター)を当てることです。道具を使う時は、使う前後に洗い、ふたりで使うことを前もって話しておきます。道具を使うことは、相手の代わりではなく、ふたりの工夫のひとつです。

向かい合う形を少し変えた「CAT(コイタル・アラインメント・テクニック)」という方法もあります。上の人がふだんより少し頭の側へずれて、骨盤どうしが当たるようにします。そのうえで、大きく出し入れするかわりに、骨盤を押し合うように小さく前後に揺らす方法です。考案者の研究では、この方法を学んだ女性ほど挿入中のオーガズムが多いという結果でした(Eichel ら, 1988)。ただし、別の専門家のグループは同じ結果を確かめられませんでした(Kaplan, 1992)。夫婦36組を2つの方法にふり分けた小さな比べる試験では、どちらの方法でも改善が見られ、この方法がやや上回った点があるという程度でした(Hurlbert, Apt, 1995)。どれも古くて人数の少ない研究なので、「効く方法」とまでは言えません。興味があれば試してみる、くらいの位置づけです。

姿勢の選び方あわびちゃん=受け入れる側、チーズちくわちゃん=もう一方向かい合う(下があお向け)動きを調整しやすい上の人深さふつう負担上の人の腕クリトリスに手でやや届きにくい受け入れる側が上動きを調整しやすい受け入れる側深さ自分で決めやすい負担上の人のひざクリトリスに手で届きやすい横向きで寄りそう動きを調整しやすいふたりとも小さく深さ浅め負担少ないクリトリスに手で前から届きやすい後ろから動きを調整しやすい後ろの人深さ深くなりやすい負担ひざ・腰クリトリスに手で自分の手で届く
名前より「誰が動きを調整しやすいか・深さ・負担・手が使えるか」で選びます。痛い・疲れたと感じたら、止めてから形を変えましょう。表の内容は本文の目安をまとめたものです。

終わったあと

よくある失敗と直し方

相手の首を絞める、同意なくコンドームを外す、お酒で判断を鈍らせて進める、といった行為は、けがや、同意のない性的な行為につながります。どんなに雰囲気が盛り上がっていても行いません。首や呼吸を圧迫する行為は、短い時間でも命にかかわる危険があります。

ふたりで試すお題 次のふれあいで、手でふれる時の「強さを1〜5で答える」練習をしてみましょう。ふれる側が「今は2くらい?」と聞き、答えた数字に合わせて強さを変えます。終わったら、いちばん心地よかった数字と場所を1つずつ伝え合ってくださいね。

参考にした資料

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