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実践編 ― ふれあいの流れを、順番に

⏱ 読む時間の目安:約12分

この章では「実際に何を、どんな順番で、どう触れ合うか」を手順として説明します。準備と衛生は第2章、痛みを防ぐ考え方は第3章にあるので、ここでは繰り返しません。研究や医療機関の情報と、経験者のあいだでよく語られる工夫は、分けて書いています。時間や強さの数字は、始めるときの目安です。どの段階も、痛みや不快があれば止めること、感じ方には個人差があることを前提に読んでください。

全体の流れと、始める前の確認

流れの一例は「始める前の確認 → キスと全身へのふれあい → 手 → 口 → からだをこすり合わせる → 肛門での性行為(する場合)→ 終わったあと」です。全部をする必要はなく、順番も入れかえてかまいません。アメリカの調査では、いちばん最近の経験でアナルセックスがあったのは37.2%で、キスや手、口でのふれあいのほうが多く見られました(Rosenberger ら, 2011)。挿入をしないふれあいだけでも、十分にひとつの形です。役割も固定せず、その日ごとに決めてかまいません。

途中で確かめる言葉の例:「このくらいの強さでいい?」「もう少しゆっくりがいい?」「ここは大丈夫?」「少し休もうか」。答えを聞いてから次に進みます。強さを「10のうちいくつ?」と数字で聞くと、ずれに気づきやすくなります。言葉にしにくいときは、相手の手に自分の手を重ねて、強さや場所を直接示す方法もあります。

ふたりの時間の流れどの段階でも「今日はここまで」「しない」を選べます1始める前に確かめるしたいこと・役割・予防の準備(第4章)2キスと全身へのふれあい急がず、反応を見ながら中心へ3手でのふれあい2人のものを一緒に包む方法も4口でのふれあい(したい時だけ)歯を当てない。苦しい時の合図を決める5こすり合わせるローションを使うと心地よい6肛門での性行為(する時だけ)潤滑剤たっぷり・指1本から・受け入れる側が主導7終わったあと拭く・洗う・寄りそう・感想を1つずつ
挿入をしないふれあいだけでも十分です。役割は固定しなくてかまいません。

キスと全身へのふれあい

手でのふれあい

2人のものを一緒にするときは、向かい合って座るか横になり、性器同士を並べます。ローションを使い、2本をまとめて軽く握って上下に動かします。ひとりが握ると強さを合わせにくいので、ふたりの手を重ねると調整しやすくなります。腰を小さく動かして、手の動きと合わせる方法もあります。

経験者のあいだでは、まず相手がひとりでするときの手の動きを見せてもらう、という工夫がよく語られます。握る強さ、速さ、どこを中心に触るかは人によって大きく違うため、見て覚えるのが近道になりやすいようです。

口でのふれあい

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、クラミジア、淋菌、梅毒、ヘルペスなど多くの性感染症が口でのふれあいでうつること、そのたびにコンドームなどを使えばうつる危険(リスク)を減らせることを説明しています(CDC, 2024a)。味つきのコンドームもあります。のどの検査は第4章を参照してください。

からだをこすり合わせるふれあい

向かい合って、または横に並んで寝て、性器同士やおなか、太ももをこすり合わせます。挿入をしないため負担は少なめで、下着をつけたまま始める人もいます。

ただし、梅毒、ヘルペス、HPVなど皮膚同士のふれあいでうつる病気は、コンドームでは防ぎきれません(CDC, 2024b)。定期的な検査が大切です(第4章)。

肛門での性行為の手順

肛門の出口には長さ2.5〜4cmほどの通り道があり、その周りに、自分の意思で動かせない内側の輪(内肛門括約筋)と、自分の意思でゆるめられる外側の輪(外肛門括約筋)があります(Ahmed ら, 2023)。その奥の直腸は、背骨の下の骨(仙骨)のくぼみにそって、ゆるやかに曲がっています(Villanueva Herrero ら, 2023)。ペースと深さは、いつも受け入れる側が決めます。次の時間の目安は経験にもとづくもので、長くかかっても問題ありません。

合わないときは、一つ前の段階に戻る、ローションを足す、姿勢を変える、今日はここまでにする、のどれを選んでもかまいません。痛みを数字(0〜10)で伝え合い、少しでも鋭い痛みがあれば止めると決めておくと安心です。

前立腺は膀胱のすぐ下、直腸をはさんでおなか側にあります(Singh と Bolla, 2023)。診察では、おなか側の壁に、少し盛り上がった弾力のあるふくらみとして触れます(Villanueva Herrero ら, 2023)。指で触れる場合は、指の腹をおなか側へ軽く曲げ、押しつけずに「軽く押して離す」か「小さく円をえがく」くらいが目安です。感じ方は人によって大きく違い、尿意に似た感じのする人もいます。強く感じすぎるときは、力を弱めるか、少し場所をずらします。

経験者のあいだでよく語られる工夫(研究で確かめられたものではありません):相手と試す前に、ひとりで指を使って感覚を知っておく。ローションは指で入り口の内側まで運ぶ。先端を入れたら一度抜いてローションを足し、また試すことを何度くり返してもよい。汚れが出ても責めない。温かくなる・冷たくなるローションは刺激になりやすいので避ける。

鋭い痛みや出血があれば、すぐに止めましょう。痛みは、ローションや始める前の時間の不足と関係していたという調査があります(Vansintejan ら, 2013)。肛門に使ったコンドームや指のまま、口や相手の性器に移らないでください(A型肝炎などは第4章)。避けたいこと:痛みを感じにくくする麻酔成分入りのローションやスプレー(止めるサインが分からなくなる)、根元にストッパーのない道具、大きすぎる物をいきなり入れること。「ラッシュ」などの亜硝酸エステル類は、日本では指定薬物として所持や使用が禁じられています(厚生労働省)。勃起を助ける薬と一緒に使うと血圧が下がりすぎるおそれがあることも、薬の説明書に書かれています(PMDA)。薬物を使う性行為については第5章を参照してください。

姿勢の選び方

体位の名前より、「誰が動きを調整しやすいか・深さ・負担」で選ぶのがおすすめです。以下は経験にもとづく目安で、どれが楽かは経験者のあいだでも意見が分かれます。

どの姿勢でも、痛みや疲れが出たら、動きを止めてから姿勢を変えます。腰やひざに持病がある人は、横向きなど負担の少ない姿勢を選びましょう。

姿勢の選び方黄色のチーズちくわちゃん=受け入れる側受け入れる側が上動きを調整しやすい受け入れる側深さ自分で決めやすい負担上の人のひざ向いている時はじめての時ふたりとも横向き動きを調整しやすいふたりとも小さく深さ浅め負担少ない向いている時疲れている日受け入れる側があお向け動きを調整しやすい上の人深さ深くなりやすい負担受け入れる側の腰向いている時顔を見たい時受け入れる側がうつぶせ動きを調整しやすい後ろの人深さ深くなりやすい負担ひざ・腰向いている時慣れてから
どれが楽かは経験者のあいだでも意見が分かれます。はじめは受け入れる側が深さと速さを決められる形から。痛みや疲れが出たら、止めてから姿勢を変えましょう。

終わったあとと、よくある失敗

ぬるま湯でぬらしたタオルやウェットティッシュでやさしく拭き、手を洗います。ローションが肌に残るとかぶれることがあるので、シャワーで流すと安心です。道具は製品の説明にそって洗い、よく乾かします。そのあと、すぐに離れず寄り添って、「よかったこと」と「次にこうしてほしいこと」を一つずつ伝え合いましょう。

ふたりで試すお題 手でのふれあいのときに、相手の手に自分の手を重ねて「ちょうどよい強さと速さ」を見せ合ってみましょう。終わったあとに、分かったことを一つずつ話してみてください。

参考にした資料

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