40代からのふたりの時間 ― 変化とじょうずに付き合う
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年齢を重ねると、からだも気持ちも、ふたりの関係も少しずつ変わっていきます。若いころと同じようにいかないことが増えるかもしれません。一方で、相手を思いやる余裕や、自分の心地よさを知っていることは、年齢を重ねたからこその強みです。この章では、40代以降に増えやすい変化と、その付き合い方をまとめます。
勃起の変化
年齢とともに、勃起するまでに時間がかかる、硬さが続きにくいといった変化を感じる人は増えていきます。アメリカ中西部の、中高年以上のゲイ男性181人を調べた研究があります。勃起の悩みと関係していたのは、年齢と、からだ全体の健康状態でした。年を取ることへのよくないイメージ(否定的な思い込み)とは、関係が見られませんでした(Prieto ら, 2024)。ある一時点に、一つの地域だけを調べた研究です。それでも、からだ全体の健康を整えることが、性の健康にもつながることを示しています。
- 高血圧、糖尿病、喫煙、運動不足などは、勃起にも影響することがあるため、健康診断を定期的に受ける
- 勃起を助ける薬は、医師に出してもらうこと(処方)が必要。心臓の病気で使う薬(硝酸薬)など、一緒に使えないものがあるので、持病や飲んでいる薬を医師に伝える
- インターネットで海外から取り寄せる品(個人輸入品)には偽物が混じる危険があるため、自分の判断だけで手に入れない
LOH症候群(男性更年期)
男性ホルモン(テストステロン)が減ってくると、疲れやすさ、気分の落ち込み、性欲や勃起の変化などが出ることがあります。これは、年齢とともに男性ホルモンが減って起こる不調(LOH症候群、加齢男性性腺機能低下症候群)と呼ばれます。専門の医師の団体である日本泌尿器科学会と日本メンズヘルス医学会は、2022年に診察や治療の手引きを新しくしました(改訂)。そこでは、血液検査でのテストステロンの値などを、病気かどうかを見きわめる(診断の)目安としています(日本泌尿器科学会・日本メンズヘルス医学会, 2022)。「年のせい」とあきらめないでください。気になる症状が続くときは、おしっこの通り道や男性の性器を診る科(泌尿器科)や、男性の健康を専門に診る外来(メンズヘルス外来)で相談しましょう。
肛門・直腸の悩み
痔(いぼ痔、切れ痔、おしりの中と皮膚の間にトンネルのような穴ができる痔ろう)は、多くの人が経験するありふれた病気です。専門の医師の団体である日本大腸肛門病学会が、診察や治療の目安をまとめたもの(診療ガイドライン)を作っています(日本大腸肛門病学会, 2020)。男性と女性の両方を対象にした研究をまとめた論文(総説)もあります。そこでは、おしりを使ったセックス(アナルセックス)が、痛みや便もれなど、骨盤の底の筋肉まわりの不調(骨盤底の不調)の原因の一つになることがあるとしています。筋肉の緊張、ローションの不足、回数や激しさが関わる、とまとめています(Chen ら, 2024)。これはこれまでの研究を広く読み解いたもので、年齢ごとの違いまでは分かっていません。それでも、無理をしないことの大切さを示しています。
- 若いころと同じペースにこだわらず、時間をかけて、ローションをたっぷり使う
- 痛みや出血があれば途中でやめ、続くときは肛門科で診てもらう
- 便秘や下痢を防ぐ食事や生活を心がける
- 出血は痔だけでなく腸の病気のこともあるので、自分の判断だけで済ませない
体力と、楽しみ方の見直し
体力や、からだのやわらかさ(柔軟性)が変わってきたら、楽しみ方も見直してみましょう。腰やひざに負担の少ない体勢を選ぶ、休憩をはさむ、疲れていない時間帯を選ぶといった工夫が役立ちます。アナルセックスにこだわらず、キスやマッサージ、ふれあいを中心にするのも自然な選び方です(第3章)。
「前と同じようにできるか」より、「今のふたりが心地よいか」を大切に。変化を話題にできること自体が、長く続く関係の力になります。
関係の変化と、孤立の問題
長く付き合っているふたりでは、性の回数が減ったり、したいことがずれてきたりすることがあります。どちらかが悪いわけではありません。第1章のように、したいこと・したくないことを改めて話し合ってみましょう。
一方で、パートナーのいない中高年の人は、ひとりぼっちになりやすい(孤立しやすい)ことも指摘されています。アメリカの中高年のゲイ男性312人を調べた研究があります。年を取ることへのよくない思いを自分の中に抱えている人ほど、気分が落ちこむ症状(うつの症状)が強いという結果でした。その関係の一部は、「自分は周りにとって大切な存在だ」と感じられるかどうかで説明されました(Wight ら, 2015)。ただし、エイズの原因になるウイルス(HIV)に感染していない人(HIV陰性の人)が多いグループで調べた、という注意点があります。それでも、人とのつながりが心の健康を支えることを示しています。気軽に立ち寄れる交流の場(コミュニティセンター、第5章)や趣味の集まりなど、安心できる居場所を持っておきましょう。
予防と検査は、年齢を問わず大切
性行為でうつる病気(性感染症)は、若い人だけのものではありません。東京都のまとめでは、男性の梅毒は20代から50代まで、幅広い年代で報告されています(東京都感染症情報センター, 2026)。パートナーが変わったときや定期的に、HIVや梅毒の検査を受けましょう。うつる前に飲むHIVの予防の薬(PrEP)は、医師の処方が必要です。自分の判断で海外から取り寄せないでください。飲んでいる間は、腎臓の働きや、骨の強さの目安(骨密度)なども含めて、病院やクリニック(医療機関)で確かめます(第4章)。
病院に行く目安:勃起の悩みや気分の落ち込みが続く、肛門の痛みや出血が続く、しこりやぶつぶつ(発疹)がある、性感染症が心配な行為があった、といったときは早めに診てもらいましょう。話しやすい医療機関の探し方は第5章を参考にしてください。
ふたりで試すお題 「若いころと比べて変わったこと」と「今のほうが好きなこと」を一つずつ話してみましょう。次の健康診断や検査の予定も、ふたりで確認し合ってみてください。
参考にした資料
- Prieto LR ら・2024・Factors Associated with Erectile Dysfunction Among Older Gay Men・Archives of Sexual Behavior
- Wight RG ら・2015・Internalized Gay Ageism, Mattering, and Depressive Symptoms among Midlife and Older Gay-Identified Men・Social Science & Medicine
- Chen AB ら・2024・Pelvic Floor Disorders Due to Anal Sexual Activity in Men and Women: A Narrative Review・Archives of Sexual Behavior
- 日本泌尿器科学会・日本メンズヘルス医学会・2022・LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き
- 日本大腸肛門病学会・2020・肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診療ガイドライン2020年版 改訂第2版・Mindsガイドラインライブラリ
- 東京都感染症情報センター・2026・梅毒の流行状況(東京都 2006年~2025年のまとめ)