よくある悩みと相談先 ― ひとりで抱えこまないために
⏱ 読む時間の目安:約6分
からだのこと、気持ちのこと、人間関係のこと。性にまつわる悩みは、身近な人に話しにくいものです。男性同士の性の場合、「病院で何と言えばいいのか」「偏見を持たれないか」という不安も重なりがちです。この章では、よくある悩みと、安心して相談できる窓口をまとめます。話しやすい病院やクリニック(医療機関)の探し方も紹介します。
痛み・出血
おしりを使ったセックス(アナルセックス)のあとに、少し血が出たり、ひりひりしたりすることはあります。ただし、次のような場合は、がまんせずに肛門科(大腸肛門科)で診てもらいましょう。
- 出血が何日も続く、量が多い
- 排便のたびに強く痛む
- 肛門のまわりにしこり、できもの、はれがある
- 熱が出る、うみが出る
出血の原因は、切れ痔やいぼ痔だけとは限りません。性行為でうつる病気(性感染症)や、腸の病気のこともあります。病院では「アナルセックスをしている」と伝えると、必要な検査を選んでもらいやすくなります。医師には、聞いたことを外にもらさない決まり(守秘義務)があります。伝えることは恥ずかしいことではありません。
勃起の悩み
緊張して勃起しにくい、途中で弱くなるといった悩みは、年齢にかかわらず珍しくありません。男性と性行為をする男性の、性の働き(性機能)についての研究をまとめた論文(総説)があります。そこでは、勃起の悩みは、男性と性行為をしない男性より多いと報告されています。その背景として、偏見や差別にさらされることで生まれる「少数派であることのストレス(マイノリティ・ストレス)」が、心の健康や性の悩みにつながることがあると指摘されています(Cheng, 2022)。ただし、この分野は研究そのものがまだ少ないと、著者自身が注意点として挙げています。
勃起の悩みは、おしっこの通り道や男性の性器を診る科(泌尿器科)や、男性の健康を専門に診る外来(メンズヘルス外来)で相談できます。勃起を助ける薬は、医師に出してもらうこと(処方)が必要です。心臓の病気の薬など、一緒に飲めないものもあります。インターネットで海外から取り寄せる品(個人輸入品)には、偽物が混じる危険もあります。自分の判断だけで手に入れず、医師に相談しましょう。
気持ちの悩み・カミングアウト・孤立
日本でインターネットを通じて男性1,025人に聞いた研究があります。15%が自殺を図った経験があると答えました。学校でのいじめや、同性愛者だと思われてからかわれた経験も多く見られました(Hidaka と Operario, 2006)。インターネットで参加者を集めた調査なので、日本の同性を好きになる男性たち(当事者)全体の姿を表すものではありません。それでも、周りの偏見が心に大きな影響を与えることを示しています。
2026年に発表された、全国規模のインターネット調査もあります。ゲイや、男性も女性も好きになる男性(バイセクシュアル男性)は、そうでない男性に比べて、職場でのいやがらせ(ハラスメント、27.7%対12.2%)や、気分が落ちこむ病気(うつ、7.2%対3.4%)の割合が高いと報告されました(Ikeuchi ら, 2026)。これは本人が自分で答えた調査(自己申告)です。年齢などほかの条件をそろえて比べると、差が小さくなる項目もありました。それでも、悩みを抱えやすい環境があることがうかがえます。
自分の性のあり方をまわりに伝えること(カミングアウト)をするかどうか、誰に、いつ伝えるかは、本人が決めることです。
無理に伝える必要はありません。また、好きになる相手の性別(性的指向)を、本人の了解なしに他の人に話すこと(アウティング)は、深く人を傷つけます。パートナーのことを誰にどこまで話してよいかも、ふたりで確かめておきましょう。
薬物を使う性行為(いわゆるケムセックス)について
違法な薬物などを使って性行為をすることには、からだにも心にも大きな危険があります。やめたくてもやめられなくなる病気(依存症)や、使いすぎ(過剰摂取)の危険があります。判断する力が落ちることで、病気がうつる危険(感染症のリスク)も高まります。研究をまとめた論文では、こうした行為をしている男性は、うつや不安、依存の症状を抱えやすい傾向があると報告されています(Íncera-Fernández ら, 2021)。やめたい、やめられないと感じたら、各都道府県にある心の健康の公的な相談窓口(精神保健福祉センター)に相談できます。相談したことで責められることはありません。
相談できる窓口
- よりそいホットライン:📞 0120-279-338(24時間・無料)。音声案内で4を押すと、セクシュアルマイノリティ専門ライン(性の少数者のための専門ライン)につながる。福島県からは📞 0120-279-226
- AGP こころの相談:性の少数者(LGBTQ+)の本人と家族の心の悩みを、心の病気を診る医師(精神科医)や心の専門家(心理職)が無料で受ける電話相談(📞 050-1725-7216)。受付日時はAGPのサイトで確認する
- ぷれいす東京 ポジティブライン:📞 0120-02-8341(月〜土13〜19時、祝日等を除く)。HIV(エイズの原因になるウイルス)に感染している人(HIV陽性の人)、くわしく確かめる検査(確認検査)の結果を待っている人、そのパートナーや家族のための、無料で名前を言わずに(匿名で)受けられる電話相談
- 気軽に立ち寄れる交流と情報の場(コミュニティセンター):akta(東京・新宿二丁目)、dista(大阪)、rise(名古屋)、haco(福岡)、ZEL(仙台)など。HIVや性の健康の情報がそろい、気軽に立ち寄れる。開館日は各サイトで確認する
理解のある医療機関の探し方
- HIVマップ(hiv-map.net)の「あんしんHIV検査サーチ」で、研修を受けた検査場所を探す(首都圏)
- 厚生労働省の「HIV検査・相談マップ」で、全国の保健所の検査日を探す
- コミュニティセンターで、地域の医療機関の情報を聞いてみる
- うつる前に飲むHIVの予防の薬(PrEP)や性感染症を扱うクリニックは、男性同士の性の相談に慣れていることが多い
「死にたい」と感じるほどつらいときは、よりそいホットライン(音声案内で5)など、今すぐつながれる窓口に電話してください。望まない性的な行為を受けたときは、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(📞 #8891)に、男性も相談できます。相談や支援をまとめて受けられる窓口です。
ふたりで試すお題 いざというときのために、この章の相談先から「自分が使いそうな窓口」を一つずつ選び、スマートフォンに登録しておきましょう。お互いの「話しやすい病院」を知っているかも話してみてください。
参考にした資料
- Hidaka Y, Operario D・2006・Attempted suicide, psychological health and exposure to harassment among Japanese homosexual, bisexual or other men questioning their sexual orientation recruited via the internet・Journal of Epidemiology and Community Health
- Ikeuchi K ら・2026・Health and social inequities among cisgender gay and bisexual men in Japan: a nationwide cross-sectional study using a large-scale web-based survey・BMC Public Health
- Cheng PJ・2022・Sexual Dysfunction in Men Who Have Sex With Men・Sexual Medicine Reviews
- Íncera-Fernández D ら・2021・Mental Health Symptoms Associated with Sexualized Drug Use (Chemsex) among Men Who Have Sex with Men: A Systematic Review・International Journal of Environmental Research and Public Health
- 一般社団法人社会的包摂サポートセンター・よりそいホットライン セクシュアルマイノリティ専門ライン
- 厚生労働省・HIV検査・相談マップ