予防と検査 ― 選べる方法を知って、定期的に確かめる
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性行為でうつる病気(性感染症)の予防は、「こわいから避ける」ためのものというより、安心して楽しむための準備です。いまは、コンドームのほかにも選べる方法が増えています。エイズの原因になるウイルス(HIV)をうつる前に防ぐ薬(PrEP)や、治療によってうつらなくする予防(U=U)、ワクチンなどです。そして、どの方法を選んでも欠かせないのが、定期的な検査です。
コンドーム
コンドームは、手軽で身近な予防の方法です。HIVや淋菌、クラミジアなど、多くの性感染症にかかる危険(リスク)を下げます。ただし、コンドームでおおわれない皮膚や、しめった薄い膜(粘膜)からうつるものもあります。梅毒や、いぼやがんの原因になるウイルス(HPV)、ヘルペスなどです。
- 最初から最後まで、正しくつける
- 水性かシリコン系のローションと一緒に使う(第2章)
- 一回ごとに新しいものに替え、2枚重ねはしない
- 財布の中など、熱やこすれがかかる場所に長く入れておかない
PrEP(HIVの曝露前予防)
PrEPは、うつる前に飲む予防の薬(曝露前予防)です。HIVに感染していない人が、前もってHIVをおさえる薬(抗HIV薬)を飲んでおきます。世界で最初に大人数で行われた、薬を試す研究(大規模な臨床試験)があります。毎日飲むグループはHIVの感染が、偽の薬を飲むグループより44%少なくなりました。また、血液から薬が見つかった人ほど感染が少なく、きちんと飲み続けることが大切だと分かりました(Grant ら, 2010)。ただし、参加者を見守った期間は、真ん中の値(中央値)で約1.2年と短めでした。飲み忘れの多い人も含まれていた点にも注意が必要です。
日本では2024年8月、「ツルバダ配合錠」がHIVの曝露前予防の薬として国に認められました(承認)。認められている飲み方は毎日飲む方法です。健康保険は使えず、全額自分で払う(自費)ことになります。飲み始める前と飲んでいる間には、HIV検査、腎臓や肝臓の検査、性感染症の検査などを定期的に受ける必要があります(HIVマップ, 2024)。費用や、ほかの飲み方の扱いは、病院やクリニック(医療機関)によって違います。薬を出している医療機関に確かめましょう。
PrEPは、医師に薬を出してもらうこと(処方)が必要です。インターネットなどで、自分の判断だけで海外から取り寄せて(個人輸入)飲むのはやめましょう。HIVに感染していることに気づかないまま飲み始めると、薬が通じにくいウイルス(耐性をもったウイルス)が生まれるおそれがあります。腎臓などへの影響も、検査なしでは分かりません。また、PrEPはHIV以外の性感染症は防げません。
U=U(検出限界未満なら、うつらない)
U=Uは「Undetectable=Untransmittable」の略です。HIVに感染している人(HIV陽性の人)が治療を続けて、血液中のウイルスの量が、検査で見つけられないほど少ない量(検出限界未満)に保たれていれば、性行為でHIVはうつらない、という考え方です。ヨーロッパ14か国で、男性カップル782組を追った研究があります。どのカップルも、一方がHIV陽性で、治療によりウイルスが抑えられていました。コンドームなしのおしりを使ったセックス(アナルセックス)が合計7万6千回以上報告されましたが、相手(パートナー)との間での感染は1件も確認されませんでした(Rodger ら, 2019)。この研究はHIVについてのものです。ほかの性感染症は防げないことに気をつけましょう。
U=Uは、HIVとともに生きる人への偏見を減らす大切な知識です。治療を続けているパートナーとの関係は、安心して築くことができます。
知っておきたい性感染症
- 梅毒:全国の報告数は2023年に15,055人と、今の調査方法になった1999年以降で最も多くなり、2024年は14,829人、2025年は13,530人(まだ確定していない速報値)と高いままが続いています(大阪府感染症情報センター, 2026)。痛みのないただれ(潰瘍)や、ぶつぶつ(発疹)など症状が分かりにくく、気づかないうちに進むことがある
- 淋菌・クラミジア:のどや直腸(腸の出口近く)の感染は症状が出にくいことがあり、尿の検査だけでは見つからない。口を使ったふれあい(オーラルセックス)でもうつる
- A型肝炎:便に含まれるウイルスが口に入ってうつる。男性と性行為をする男性の間では、世界各地で多くの人に広がること(集団発生)がくり返し報告されており、国の研究機関もワクチンの情報を伝えるよう呼びかけている(国立健康危機管理研究機構, 2026)
- HPV:性器や肛門にできるいぼ(尖圭コンジローマ)や、肛門がんの原因になるウイルス。コンドームだけでは防ぎきれない
ワクチンで防げるものもある
A型肝炎とB型肝炎にはワクチンがあります。HPVについては、2025年8月に、防げるウイルスの型が多いワクチン(9価ワクチン)「シルガード9」が承認されました。男性への接種と、肛門がんの予防に使ってよい(適応)と認められました(MSD, 2025)。男性の接種は多くが自費です。ただ、市区町村など(自治体)によっては、費用の一部を出してくれる制度(助成)があります。接種してよいかどうかは、医療機関で相談しましょう。
検査を習慣に
保健所では、HIV検査を無料で、名前を言わずに(匿名で)受けられます。多くの保健所では、梅毒などの検査も一緒にできます。厚生労働省の「HIV検査・相談マップ」で、近くの検査場所や日時を探せます。首都圏なら「あんしんHIV検査サーチ」(HIVマップ)も便利です。ゲイや、男性も女性も好きになる男性(バイセクシュアル男性)に配慮する研修を受けた検査場所が分かります。
- パートナーが変わったとき、または数か月ごとなど、定期的に受ける
- のど・直腸・尿など、どこを検査するかを伝える
- 気になる症状があれば、次の検査を待たずに病院で診てもらう
ふたりで試すお題 「最後に検査を受けたのはいつ?」をお互いに話してみましょう。まだの方は、一緒にHIV検査・相談マップで近くの検査日を調べて、予定を決めてみてください。
参考にした資料
- Grant RM ら・2010・Preexposure chemoprophylaxis for HIV prevention in men who have sex with men・New England Journal of Medicine
- Rodger AJ ら・2019・Risk of HIV transmission through condomless sex in serodifferent gay couples with the HIV-positive partner taking suppressive antiretroviral therapy (PARTNER)・Lancet
- HIVマップ(NPO法人akta)・2024(2026年更新)・PrEP:ツルバダが薬事承認されて、何がどう変わるのか?
- 大阪府感染症情報センター・2026・梅毒
- 国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所・2026・世界における男性間性交渉者(MSM)間でのA型肝炎のアウトブレイク・IASR Vol.47
- MSD株式会社・2025・9価HPVワクチン「シルガード9」肛門がんの予防の適応追加と男性への接種対象拡大について承認を取得









