心地よく過ごす工夫と、痛みを防ぐこと
⏱ 読む時間の目安:約4分
性の時間は、ふたりが心地よく、楽しく過ごせることがいちばんです。とくに、おしりを使ったセックス(アナルセックス)では「痛いのは仕方ない」と思い込まれがちです。けれども、痛みはがまんするものではありません。からだからの大切なサインです。この章では、痛みを減らすための考え方と、アナル以外にもたくさんある楽しみ方を紹介します。
痛みは「よくあること」でも「がまんするもの」ではない
ベルギーの男性1,752人が答えたインターネット調査があります。直近4週間に受ける側を経験した人のうち59%が、程度の差はあっても何らかの痛みを感じていました。痛みと関係していたのは、ローションが足りないことと、始める前のふれあいや準備の時間が足りないことでした(Vansintejan ら, 2013)。この調査は本人が自分で答えたもの(自己申告)です。エイズの原因になるウイルス(HIV)に感染している人を含まないなど、注意すべき点もあります。それでも、痛みの多くは工夫で減らせるかもしれないことを示しています。
また、アメリカの男性404人を調べた研究では、14%が強い痛みをくり返し感じていました。その多くの人が、気持ちの面(緊張や不安など)を主な原因だと感じていました(Damon と Rosser, 2005)。この研究には比べる相手のグループがなく、原因も本人の感じ方にもとづいています。そのため、ほかの人たちにそのまま当てはめること(一般化)はできません。それでも、体と心の両方が関わることを教えてくれます。
痛みを防ぐ4つのポイント
- 時間をかける:いきなり進めず、キスやふれあい、マッサージなどで気持ちとからだをほぐす
- 力を抜く:深くゆっくり息を吐くと、自分で動かせる外側の筋肉がゆるみやすい。受ける側が自分のペースで動ける体勢を選ぶ
- ローションを十分に:乾いてきたら迷わず足す(選び方は第2章)
- 小さく、ゆっくり:指1本など小さなところから始め、慣れたら少しずつ。途中で止まって待つ時間も大切にする
男性と女性の両方を含む研究をまとめた論文(総説)もあります。そこでは、痛みに関わるものとして、気持ちの面でのいやな感じ(心理的な不快感)が挙げられています。ほかに、骨盤の底で内臓を支える筋肉(骨盤底の筋肉)の緊張、うるおいの不足、回数や激しさも挙げられています。そして、骨盤底の筋肉を整えるリハビリ(理学療法。筋肉の使い方の練習など)が、予防やよくすることに役立つかもしれないとしています(Chen ら, 2024)。これはこれまでの研究を広く読み解いた論文です。治療の効果を比べた研究はまだ少ないことに気をつけましょう。
鋭い痛み、焼けるような痛み、出血、終わったあとも続く痛みがあるときは、すぐにやめましょう。「やめて」と言われたら、理由を聞く前にまず止めるのが約束です。痛みや出血が続く場合は、第5章の相談先を参考に病院で診てもらってください。
緊張をほどくための工夫
- 明るさ、室温、音楽など、安心できる環境を整える
- 時間に追われない日を選ぶ
- 「うまくやらなきゃ」と思いすぎない。今日は途中まででも十分と考える
- ひとりの時間に、自分のからだの感じ方を知っておく
- 終わったあとは、ゆっくり寄り添う時間をとる
アナル以外にも、楽しみ方はたくさん
男性同士の性というとアナルセックスが中心だと思われがちです。けれども実際は、とてもいろいろな形があります。アメリカの男性約2万5千人に、いちばん最近の性の経験を聞いた調査があります。多かったのはキス(74.5%)、口を使ったふれあい(オーラルセックス、72.7%)、互いの手でふれあうこと(68.4%)でした。アナルセックスは全体の37.2%でした。一回の中で5〜9種類のふれあいがあるのがふつうだったとも報告されています(Rosenberger ら, 2011)。インターネットで参加者を集めた調査のため、国全体の姿を表すものではありません。それでも、「アナルセックスをしなければ本番ではない」という思い込みを見直すきっかけになります。
- キス、抱き合う、肌を重ねる
- 全身へのマッサージや、やさしくなでること(愛撫)
- 互いの手でふれ合う
- オーラルセックス(のどにも性行為でうつる病気(性感染症)があるため、予防は第4章を参照)
- 挿入をせずに、からだを重ねて楽しむふれあい
アナルセックスをする・しないは、ふたりが自由に選べることです。「しない」と決めているカップルも、したりしなかったりのカップルもいます。どちらも自然な形です。
ふたりで試すお題 次の時間は、アナルセックスをしないと決めて、キスやマッサージだけでどれだけ心地よく過ごせるか試してみましょう。終わったあとに「気持ちよかったこと」を一つずつ伝え合ってください。
参考にした資料
- Vansintejan J ら・2013・The GAy MEn Sex StudieS: Anodyspareunia Among Belgian Gay Men・Sexual Medicine
- Damon W, Rosser BRS・2005・Anodyspareunia in men who have sex with men: prevalence, predictors, consequences and the development of DSM diagnostic criteria・Journal of Sex & Marital Therapy
- Chen AB ら・2024・Pelvic Floor Disorders Due to Anal Sexual Activity in Men and Women: A Narrative Review・Archives of Sexual Behavior
- Rosenberger JG ら・2011・Sexual behaviors and situational characteristics of most recent male-partnered sexual event among gay and bisexually identified men in the United States・Journal of Sexual Medicine









