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性の健康を守る習慣 ― 検査・避妊・ワクチン・検診、そして心のケア

⏱ 読む時間の目安:約7分

性を楽しむことと、自分と相手の健康を守ることは、同じ一つの習慣の表と裏です。この回では、公的機関の情報をもとに、次のことをまとめます。日本で増えている、性行為でうつる病気(性感染症)の今の様子。お金がかからず、名前を言わずに受けられる検査。避妊。HPVワクチン。がん検診。そして心の健康です。シリーズの最後に、相談先の一覧も載せています。

性感染症は「だれにでも起こりうる」もの

WHO(世界保健機関)によると、世界では15〜49歳の人の間で、治療できる性感染症に新しくかかる人が毎日100万件以上いると見積もられています(推計)。その多くは症状がありません(WHO, 2025)。症状がないまま、気づかずに相手へうつしてしまうことがある。そこが性感染症の難しいところです。

日本で特に目立つのが、梅毒という性感染症です。国立健康危機管理研究機構(国立感染症研究所)のまとめでは、梅毒と診断されて届けられた数(報告数)は2011年ごろから増え続けています。2023年は15,055例、2024年は14,829例(男性9,504例、女性5,324例)でした(国立健康危機管理研究機構, 2026a)。2025年の報告は、2026年1月6日時点の早めの集計(速報)で約1万3,500例でした。わずかに減ったものの、高い水準が続いています(遅れて届く報告は含まれていません)(国立健康危機管理研究機構, 2026b)。2000〜2010年は年間500〜800例台だったことを考えると、大きな変化です。

HIV(エイズの原因になるウイルス)については、2024年に新しく届けられた数が994件で、2年続けて増えました。そのうち約3割は、エイズの症状が出て(発症して)初めて、感染に気づいた人でした(厚生労働省)。

HIVは、治療によって血液の中のウイルスの量が、検査で見つからないほど少ない状態に6か月以上保たれている人からは、性行為でうつらないことが分かっています(U=U)。早く知って早く治療を始めることが、本人の健康にも、相手を守ることにもつながります(厚生労働省)。

検査は、保健所で無料・匿名で

全国の保健所や自治体の検査所では、名前を言わずに(匿名で)、無料でHIV検査を受けられます。梅毒、クラミジア、淋菌などの検査も一緒に受けられるところがあります。ただし、調べる病気の種類や日時、予約がいるかどうかは、保健所ごとにちがいます。一部の検査にお金がかかる場合もあります(厚生労働省, 性感染症検査・相談マップ)。

避妊 ― ふたりで決めて、ふたりで守る

コンドームは、避妊と性感染症の予防を同時に助ける道具です。ただし、正しく使っても失敗することはあります。そのため、ほかの避妊のしかたと組み合わせることも選べます。避妊の方法は、体や生活に合わせて、医師や薬剤師と相談して選びましょう。

避妊に失敗したときや、避妊ができなかったときのために、性交のあとに飲んで妊娠を防ぐ薬(緊急避妊薬)があります。2026年2月2日からは、研修を受けた薬剤師がいる薬局やドラッグストアで、医師の処方箋なしで買えるようになりました(厚生労働省, 2026)。買った場所で、薬剤師の前で飲む仕組みです。扱っている薬局は、厚生労働省のサイトで確かめられます。薬の在庫や、薬剤師がいるかどうかによって買えない場合もあります。そのため、前もって電話で確かめることがすすめられています。

緊急避妊薬は、飲むのが早いほど妊娠を防ぐ力が期待できるとされています。性交のあと72時間以内に飲むのが目安です(読売新聞, 2026)。妊娠を完全に防げるものではないので、飲んだあとも妊娠していないか確かめましょう。性暴力の被害によるときは、医療・相談・警察への付き添いなどをひとつの窓口でまとめて支える、ワンストップ支援センター(📞 #8891)でも医療につないでもらえます。

HPVワクチンと子宮頸がん検診

子宮の入り口にできるがん(子宮頸がん)は、日本で年間約1.1万人がかかり、約2,900人が亡くなっている病気です。主な原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染した状態が長く続くことです。9価のHPVワクチン(「価」は、防げるウイルスの型の数を表します)は、子宮頸がんの原因の約8〜9割をしめる型のウイルスへの感染を防ぐとされています(厚生労働省, 2025a)。

国や自治体の費用で受けられる予防接種(定期接種)は、小学6年から高校1年に相当する年齢の女性が対象です。受ける機会を逃した人のための「キャッチアップ接種」は、2026年3月末で終わりました。2025年3月末までに1回以上受けた人が、残りの回を受けられる特別な期間(経過措置)も、ここに含まれます(厚生労働省, 2025b)。定期接種の対象ではない人が受ける場合は、自分で希望して受ける接種(任意接種)として、費用がかかるのが一般的です。受けるかどうかは、医師とよく相談して決めましょう。

ワクチンを受けた人も、受けていない人も、がん検診は大切です。市区町村の子宮頸がん検診は、20歳以上の人を対象に、2年に1回、子宮の入り口の細胞をとって調べる検査(細胞診)を行うのが基本です。2024年4月からは、条件を満たした自治体で、30〜60歳の人を対象に「HPV検査単独法」も選べるようになりました。これはHPVに感染しているかを調べる検査で、結果に問題がなければ5年に1回です(厚生労働省, 2024)。お住まいの自治体の案内を確認してみてください。

心の健康も、性の健康の一部

性の悩みは、人に話しにくいぶん、一人で抱え込みがちです。パートナーとのすれ違い、体の悩み、性的な行動をやめられない苦しさ、過去のつらい経験など。心の負担になっていることがあれば、専門の窓口に相談できます。WHOが作った病気の分類(国際疾病分類)では、性的な衝動や行動を長くおさえられず、生活に大きな困りごとが出ている状態を、ひとつの病気として扱っています。名前は「強迫的性行動症」です(Kraus ら, 2018)。「だらしない」と自分を責めるより、助けを借りることを考えてみてください。

相談先のまとめ

性暴力の被害:ワンストップ支援センター 📞 #8891(通話料無料、受付時間はセンターにより異なる)/警察の性犯罪被害相談電話 📞 #8103(通話料無料、24時間)/SNS相談 Cure time(毎日17〜21時、https://curetime.jp/)

性感染症・HIVの検査:厚生労働省「性感染症検査・相談マップ」(https://www.mhlw.go.jp/stikensa/)、「HIV検査・相談マップ」(https://www.hivkensa.com/)で、近くの無料・匿名の検査場所を探せます。

緊急避妊薬を扱う薬局:厚生労働省「要指導医薬品である緊急避妊薬の販売が可能な薬局等の一覧」(毎月上旬に更新。要指導医薬品は、薬剤師から対面で説明を受けて買う薬のことです)

心の悩み:こころの健康相談統一ダイヤル 📞 0570-064-556(受付時間は都道府県により異なる)/よりそいホットライン 📞 0120-279-338(24時間、通話料無料)/#いのちSOS 📞 0120-061-338(24時間、通話料無料)

性の悩み・カップルの悩み:日本性科学会「セックスカウンセラー・セラピスト一覧」(https://sexology.jp/counselors_list/)

ほかの窓口も含めた一覧は、別ページ「相談先・カウンセラーの案内」にまとめています。番号や受付時間は変わることがあるので、公式ページもあわせて確認してください。

参考にした資料