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第2章 からだのしくみと感じ方の違い ― 反応の段階と個人差

⏱ 読む時間の目安:約6分

「どうして相手と自分で、こんなにペースが違うんだろう」と感じたことはありませんか。その多くは、どちらかが悪いせいで起きるものではありません。からだの反応のしかたや感じ方に、もともと人それぞれの幅があることから生まれます。この章では、性的な反応の流れと、研究で分かっている男女の傾向、そして一人ひとりの違いについてお話しします。

性的な反応は「段階」で説明されてきた

医学では昔から、性的な反応を次の4つの段階で説明してきました。

この流れは分かりやすい地図のようなものです。ただ、実際にはいつもこの順番どおりに進むとは限りません。

女性のからだ(外側)の名前 毛が生えるふくらみ(恥丘) クリトリスをおおう皮(陰核包皮) クリトリス(陰核亀頭) おしっこの出口(尿道口) 腟の入り口(腟口) 内側のひだ(小陰唇) 外側のひだ(大陰唇) 腟とおしりのあいだ(会陰) おしりの穴(肛門)
形・色・大きさは人それぞれで、どれも「ふつう」です。医療の資料をもとに、かんたんにして描いた図です。
クリトリスの全体の形外から見えるのは一部。多くは体の内側に広がっています ↑ 体の内側 ↓ 外から見える さきっぽ(外から見える)(陰核亀頭) つけね(陰核体部) 左右にのびる部分(陰核脚) ふくらむ部分(前庭球)
海外の研究をもとに、かんたんにして描いた図です。大きさや形は人それぞれです。
男性器の断面(輪切り)かたくなる(勃起する)のは、スポンジのような部分に血がたまるから 血をためるスポンジ(陰茎海綿体) 血をためるスポンジ(陰茎海綿体) 通り道をつつむ部分(尿道海綿体) おしっこと精液の通り道(尿道) 外側の皮ふ(皮膚)
ふだんはやわらかく、興奮するとスポンジのような部分(陰茎海綿体)に血がたまって、かたくなります。医療の資料をもとに、かんたんにして描いた図です。
気持ちの高まりの流れよく知られた4つの段階。流れ方は人それぞれで、毎回同じとは限りません 時間 → 高まり ↑ わくわくし始める(興奮期) 高まりが続く(平坦期) いちばん高いところ(オーガズム) おだやかにもどる(消退期)
1960年代の研究(Masters と Johnson)で知られた4つの段階を、かんたんにした図です。気持ちの高まりから始まらない流れもあるという考え(Basson, 2000)もあり、届かなくても失敗ではありません。

「気持ちが先」とは限らない ― 反応してから高まる欲求

カナダの医師バッソンは、次のような考え方の型(モデル)を示しました(Basson, 2000)。特に長く付き合っている関係の女性では、最初から強い「したい気持ち」があるとは限りません。「ふたりの親しさを感じたい」といった気持ちからふれあいが始まり、刺激を受けて高まってから、あとで「したい気持ち」がわいてくることも多い、というものです。これは診察の経験から生まれた考え方で、たくさんの人を調べて確かめたものではありません。それでも、「最初から乗り気でないとおかしい」わけではないことを教えてくれます。医療者向けの手引き(MSDマニュアル)でも、刺激で高まりや快感が生まれたあとに出てくる「したい気持ち」(反応性の欲求)が紹介されています。

なお、この「あとから高まる」反応は女性だけのものではありません。男性にも見られることがあります。性別で決めつけず、「自分たちはどうか」を観察してみるのがおすすめです。

反応性の欲求は、「相手が同意していなくても、始めれば乗ってくる」という意味ではありません。ふれあいを始めるかどうか、続けるかどうかは、いつでも第1章の同意が前提です。

オーガズムの届きやすさには、男女で差がある

アメリカの大人約5万2千人を調べた調査があります。性的なふれあいのときに「たいてい、またはいつも」オーガズムに届くと答えた人は、異性を好きになる男性では95%でした。一方、異性を好きになる女性では65%でした(Frederick ら, 2018)。同じ調査で、女性同士のカップルの女性は86%と高く、この差は「女性のからだだから」だけでは説明しきれないことも分かりました。ただし、インターネットで本人が答えた調査なので、答えの正確さや、答えた人のかたよりには限界があります。

「たいてい・いつも」オーガズムに届く人異性を好きになる男性95%女性同士のカップルの女性86%異性を好きになる女性65%
出典:Frederick ら(2018)。アメリカの大人約5万2千人。インターネットで本人が答えた調査で、答えた人のかたよりには限界があります。

この調査では、オーガズムに届きやすかった女性には、ある傾向がありました。挿入だけでなく、深いキス、手で性器にふれること、口でふれることなどを組み合わせていたり、してほしいことを言葉にしていたりしたのです。

クリトリスへの刺激の大切さ

アメリカの18〜94歳の女性1,055人を調べた全国調査では、挿入だけでオーガズムに届くと答えた人は18.4%だけでした。36.6%は、挿入中にクリトリスへの刺激が必要だと答えました。さらに36%は、なくてもよいけれど、クリトリスへの刺激があるともっと心地よいと答えています(Herbenick ら, 2018)。心地よいと感じるふれ方の場所・強さ・動かし方の好みも、人によってさまざまでした。性の情報サイトと一緒に行った研究であることや、アメリカでの結果であることには注意が必要です。

つまり、「挿入だけで届かないのはおかしい」ということはありません。むしろ、それがよくあることです。

男性にも幅がある

男性は「いつでもすぐ反応して、必ず届くもの」と思われがちです。けれど実際は、疲れや緊張、お酒、体調によって、勃起のしかたや高まり方は変わります。高まるまでの時間や、心地よいと感じる刺激も一人ひとり違います。「男だからこうあるべき」という思い込みが、かえって緊張を生むこともあります。

研究で分かるのは「たくさんの人を集めたときの傾向」です。あなたやパートナーがその平均に当てはまらなくても、それはおかしなことではありません。痛みや強い悩みが続くときは、第5章の相談先を参考にしてください。

ふたりで試すお題 「気持ちが先に高まるタイプか、ふれあってから高まるタイプか」を、それぞれ自分なりに考えて話してみましょう。正解はないので、「最近はこっちかも」くらいの軽さで大丈夫です。

参考にした資料

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